本記事では、中国において秘密計算サービスを提供している企業を紹介します。
はじめに
2021年2月、日本の大手メーカー系SIerが中心となり、「秘密計算研究会」が立ち上げられたことが公表されました。
本研究会はデータを暗号化したまま分析する「秘密計算」の普及を目的としており、今後日本国内においてこの技術へに認知が広まっていくことは確実に思えます。
このように、日本では今後拡大の傾向がみられる秘密計算ですが、海外ではどのような動きがみられるのでしょうか?
なお、世界規模での秘密計算市場の推移に関しては以下の記事にて解説しています。
今回は、昨年度に当国初となる、個人情報保護法の草案が公表され、プライバシーへの機運が高まりつつあつ中国に焦点を当てて解説をします。
この中国の個人情報保護法に関する詳細は以下の記事にて解説しています。
鍩崴科技(NVXCLOUDS)
中国において秘密計算技術で注目を集めている会社の一つに、「鍩崴科技(NVXCLOUDS、以下NVX)」があります。
NVXは、「プライバシー保護クラウドコンピューティングプラットフォーム」を構築し、データの秘匿化と活用の両立を実現する秘密計算サービスを提供しています。このプラットフォームには、セキュアマルチパーティ計算などの計算技術、ブロックチェーン技術およびHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャー、シンプルな構成を実現した仮想化基盤)を採用しています。
同社は、データ解析の場面において、データ分析者はデータ所有者の機微情報を知ってはいけないが、データの演算結果を報告しなければならないというジレンマに注目し、上記プラットフォームサービスを開発しました。
共同創業者に生命情報科学の博士号を取得したメンバーがいる背景もあり、中国国家の医療情報ビッグデータ領域と連携した活動を行っています。事例としては、病院間での医療データの安全な転送と共有、新型コロナウイルスの感染拡大のモニタリングと分析、新薬の開発、全国民の健康管理などがあります。
また、それ以外に金融の領域でも事業を展開しています。
同社は、既にシリーズA投資として、啓明創投(Qiming Venture Partners)から数千万元(数億円)の出資を受けています。
数牍科技(sudoprivacy)
数牍科技は、テクノロジーを組み合わせることによって、マルチパーティ計算における複雑な計算が実行できるプラットフォームの構築に取り組んでいる企業です。
このプラットフォームの構築のために、マルチパーティ計算や、準同型暗号技術、差分プライバシー、連合学習などの技術を用いていることを公表しています。
他にもいくつかのアプリケーションの提供を行なっています。例えば、匿名データクエリというアプリケーションでは、独自のクエリ条件(検索に使用するキーワード)を公開せずに、クエリを用いた検索や計算の結果を取得することができます。
数牍科技の設立メンバーはFacebookやGoogle出身者で構成されており、データサイエンスやAI、暗号化に関して優れた知見を持っています。また、数十の米国特許を持ち合わせており、中国の国立サーバースペース管理局などと連携してデータプライバシー関連の基準作成プロジェクトへの参加実績もあります。
同社は、中国国内で数千万元(数億円)規模のエンジェル投資家を獲得しています。
まとめ
中国において、秘密計算サービスを提供している企業の紹介を行いました。
- 鍩崴科技(NVXCLOUDS)
- データの秘匿化と活用の両立を実現する、「プライバシー保護クラウドコンピューティングプラットフォーム」を提供している
- 病院間での医療データの安全な転送と共有、新型コロナウイルスの感染拡大のモニタリングと分析、新薬の開発、全国民の健康管理など、多数の事例を持つ
- シリーズA投資として、数千万元(数億円)の出資を受けている
- 数牍科技(sudoprivacy)
- テクノロジーを組み合わせることによって、マルチパーティ計算における複雑な計算が実行できるプラットフォームの構築に取り組んでいる
- 独自のクエリ条件(検索に使用するキーワード)を公開せずに、クエリを用いた検索や計算の結果を取得することができる、匿名データクエリなど、複数のサービスを持つ
- 中国国内で数千万元(数億円)規模のエンジェル投資家を獲得している