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DPCデータを経営に結びつけるーー大学病院の取り組みを紹介

はじめに

病院経営は今、苦しい状態にあります。新型ロナウイルス感染症拡大により、医療機関の受診を控える動きが出てきました。厚生労働省によると、2020年度の概算医療費は42兆2000億円と、前年比3.2%減。減少幅は1.4兆円と、過去最大の減少となりました。

病院の経営体制悪化には、東京女子医大の看護師400人退職希望のニュースが記憶に新しいと思います。コロナ患者対応に加え、外来患者の減少も経営を苦しめる要因となっています。

このような状況下、今後の病院経営を健全化する一つの手法に「DPCデータ」の活用があります。DPCデータは、病院の経営体制がわかってしまう、いわゆる病院のプライバシーデータに該当するものです。このデータを活用し、現場の医療コストを把握し、経営改善に役立てる動きが出てきました。

  • 病院のプライバシーデータとは
  • 神戸大学医学部附属病院の事例
  • 千葉大学医学部附属病院の事例
  • 名古屋大学医学部附属病院の事例

病院のプライバシーデータとは

病院は、さまざまなプライバシーデータを保有しています。昨今では、電子カルテやオンライン診療などの拡大で、患者に関する電子データを取り扱うようになりました。

一方で、医療データの活用は「個人情報保護法」をはじめ、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」や「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」など、さまざまな法律や公的指針によって活用を規制されています。

例えば民間の共同研究者間で各々の情報提供を行う場合、組織間をまたいでしまうことから、データの共有には複雑な手続きや匿名加工が必要となってきます。

DPCデータとは

病院が持つプライバシーデータから、今回はDPCデータについて見ていきます。

DPCデータとは、Diagnosis Procedure Combinationの略で、診断報酬を計算する仕組みの一つです。このDPCデータは簡易診療録情報や包括レセプト情報などといった、病院の「プライバシーデータ」と位置付けられます。DPCデータを閲覧すれば、病院の経営状況が明らかになり、外部には公開しにくい情報となっています。

そのため厚生労働省からDPCデータは、外部との連携の際に条件が定められています。「DPCデータの提供に関するガイドラインの制定について」によれば、

利用者及び第三者に患者等の情報が特定されることがないよう、各申出の内容に応じて、統計法(平成 19 年法律第 53 号)の匿名データの提供において導入されている次の匿名化処理の技法等を参考にして、有識者会議での議論及び技術的な問題等を勘案し、提供するデータに適切な処理を施すものとし、DPCデータの提供に際し、厚生労働省は、これらの措置を講じた場合には、その措置の内容を利用者に明示するものとする。

となっており、外部連携の際には(データの内容によるものの)匿名化処理が必要という旨が記載されています。

神戸大学医学部附属病院の事例

神戸大学医学部附属病院もまた、DPCデータ活用に向け動き出しています。2019年、同病院内に「情報分析推進室」を開設。兵庫県内の医療機関からDPCデータ提供のハブとなり、地域のシンクタンク機能として、地域医療構想の推進に向けたデータ分析を行なっています。また、データを活用した病院経営に関する教育活動も実施しています。文部科学省補助事業として、「実践的病院経営マネジメント人材養成プラン(M×M KOBE)」を運営しています。

実践的病院経営マネジメント人材養成プラン(M×M KOBE)

病院経営が課題となる中、情報分析推進室は、病院経営に関する経営人の育成に力を入れています。「各職種に関する専門的技能を活かしつつ、全体的な視野に立ってトップレベルの意思決定に参画する管理経営人材」と、「地域マネジメントに焦点を当て、目標設定や現状分析のために直面している課題を具体的な数値等で『見える化』できる人材」の育成を目指しています。

 

実践的病院経営マネジメント人材養成プランより引用(https://www.med.kobe-u.ac.jp/mmkobe/

同プログラムは、文部科学省平成29年度大学教育再生戦略推進費「課題解決型高度医療人材養成プログラム」に神戸大学として採択されています。

千葉大学医学部附属病院の事例

千葉大学医学部附属病院では、2019年に発足した「次世代医療構想センター」のもと、DPCデータなど医療のプライバシーデータ活用に向け動き出しています。

次世代医療構想センターとは

次世代医療構想センターとは、2025年以降の地域医療ニーズを見据えた質の高い医療提供を行うための研究施設です。地域医療構想の実現、医師偏在の解消、医師の働き方改革を掲げ、2019年に発足しました。

千葉大学次世代医療構想センターより引用(https://www.ho.chiba-u.ac.jp/NextGeneration/about/about/

「次世代医療構想部門」と「政策情報分析部門」の2部門に分かれており、次世代医療構想部門では、千葉県内の医療に関連する組織や団体に対し現状の情報共有・意見交換の場の提供、政策医療分野である小児科・産科・救急科を中心とした診療科別研究会の開催、地域の医療資源に関する研究を行っています。

政策情報分析部門では、千葉県内の医療機関のレセプトデータ、DPCデータ、病床機能報告データに加え、診療現場からのヒアリングによる生の声を活用した情報収集を行い、診療科別、2次医療圏別の精緻な現状調査・分析を行っています。

中でも政策情報分析部門では、患者に関わるプライバシーデータの収集・分析により、医療機関のプロファイル作成や、情報の集約・実態の見える化を目指しています。

NTTコミュニケーションズとの共同研究

NTTコミュニケーションズとの共同研究も行っています。2021年2月には、NTTの秘密計算を活用した研究を開始しました。

同研究は、秘密計算ディープラーニングを用いることで、複数の施設から収集した臨床研究データを、施設間で相互に秘匿された状態で分析可能かを検証するとのことです。千葉大学病院の各診診療科と、複数施設の臨床研究データを用いて臨床研究に必要な横断研究や縦断研究を実施することを目指しています。

名古屋大学医学部附属病院の事例

名古屋大学医学部附属病院は、愛知県「高齢者疾患医療連携体制事業」に基づき、DPCデータ分析を開始しています。

愛知県「高齢者疾患医療連携体制事業」

名大病院は2017年度より、愛知県の「高齢者疾患医療連携体制事業」に基づき、DPCデータ分析を開始しました。これは、地域包括ケア実現を目的とする「医療介護総合確保推進法」によるものです。

データを病院経営に活用しようとした場合、DPCデータの共有が必要となってきます。しかしDPCデータは病院にとってのプライバシーデータということもあり、複数病院間での共有は難しく、データの収集・分析、全体の把握が困難となっていました。

Acompanyとの共同研究

Acompanyは、名大病院と共同で秘密計算技術を活用した病院経営問題を対象とする研究を開始しました。実験は、DPCデータなどのプライバシーデータを収集・分析することで、より有用な分析結果を得ることを目的に行われました。

Acompanyは、独自開発した秘密計算エンジン「QuickMPC」を用いて複数病院のDPCデータの統合分析を試みました。

実験内容は、複数の医療施設から収集したDPCデータや医療情報などの外部公開が難しいデータを対象に、秘密計算を活用することで情報を秘匿したままの状態で分析可能であるかを検証しました。これにより、名大病院の医療データ分析ノウハウを基にして、複数の病院が保有する医療情報を対象にしたデータ分析を広く提供していくことが可能となりました。

今後は、DPCデータだけにとどまらず病院が持つさまざまなデータにまで対象を広げることで、病院経営において有効な分析に繋げていきます。

まとめ

  • 病院経営改善において、プライバシーデータ活用は重要である。
  • その中で、DPCデータの分析・活用は病院経営改善において有効な手段である。
  • 神戸大学医学部附属病院、千葉大学医学部附属病院、名古屋大学医学部附属病院では、DPCデータを活用した、病院経営に取り組み始めている。

Acompanyでは、企業のプライバシーデータ利活用を法律・技術の両面からサポートします。ご気軽にお問い合わせください。

参考

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000188034.pdf

https://www.prrism.com/newscolumns/2173/#_ftnref1

http://www.miyauchi-law.com/f/191001iryodataregulation.pdf

https://www.m3.com/news/open/iryoishin/944063

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