概要
匿名加工情報とは、個人情報を加工して特定の個人を識別できないようにしたものであり、個人情報保護法において定義されている、個人に関連する情報の一つだ。

個人情報保護法における定義は以下である。
次の各号に掲げる個人情報の区分に応じて当該各号に定める措置を講じて特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにしたものをいう。
①第1項第1号に該当する個人情報 当該個人情報に含まれる記述等の一部を削除すること(当該一部の記述等を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。
②第1項第2号に該当する個人情報 当該個人情報に含まれる個人識別符号の全部を削除すること(当該個人識別番号を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。
匿名加工情報は特定の個人を識別できないように加工してあり、個人情報には含まれない。そのため、取り扱う際の義務が一部緩和されている。
例えば、第三者提供を行う際、個人情報であればその旨を本人に通知し同意を得る必要があるが、匿名加工情報の場合には不要となる。
一方、個人に関する情報である点は変わらないため、取扱の際には主に以下の義務を果たす必要がある。
- 適切な加工
- 安全管理措置
- 公表義務
- 識別行為の禁止
適切な加工
匿名加工情報を作成する事業者は個人情報を適切に加工する必要がある。
匿名加工情報の定義にもあったように、「当該個人情報を復元できないように」することが必要だ。
安全管理措置
匿名加工情報を作成する事業者は、以下の2つ安全管理措置を行う必要がある。
- 匿名加工情報の加工方法等情報の漏洩防止
- 匿名加工情報に関する苦情への処置・適切な取扱措置と公表
公表義務
以下のいずれかの場合には、事業者に公表義務が課される。
- 匿名加工情報を作成した時
- 匿名加工情報を作成した事業者は、匿名加工情報の作成後遅滞なく、ホームページ等を利用し、当該匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目を公表
- 匿名加工情報を第三者に提供する時
- 匿名加工情報を第三者に提供する時には、あらかじめホームページ等で第三者に提供する匿名加工情報に含まれる項目及び匿名加工情報の提供の方法を公表しなければいけない。
識別行為の禁止
匿名加工情報を取り扱う場合には、作成元となった個人情報の本人を識別する目的で以下の行為を行うことは禁止されている。
- 自ら作成した匿名加工情報を、本人を識別するために他の情報と照合すること。
- 受領した匿名加工情報の加工方法等情報を取得すること。また、受領した匿名加工情報を、本人を識別するために他の情報と照合すること。
具体的な加工方法
具体的な加工方法としては、以下がガイドライン[1]にて紹介されている。
- 氏名、住所、生年月日が含まれる個人情報を加工する場合
- 氏名を削除する。
- 住所を削除する。または、〇〇県△△市に置き換える。
- 生年月日を削除する。または、日を削除し、生年月に置き換える。
- 匿名加工処理の終了
- 氏名を削除する。
今回のケースでは特に触れなかったが、匿名加工情報の加工コストは大きいとされている。その理由は、匿名加工情報は加工を行った情報から個人が特定できないかを確認する必要等があるためである。
匿名加工情報の活用事例
匿名加工情報が利用された事例を複数紹介する。
自治体ビッグデータ利活用
2020年3月、千葉県市川市が納税記録や戸籍情報などを匿名加工情報にし、これを民間企業に提供して利活用する試みを進めていることが報じられた。[2]
この後は、介護サービス利用者の将来の介護費や医療費予測の面でデータを活用していくそう。
オープンデータ化のための匿名加工情報利用
2021年3月、兵庫県神戸市が株式会社日立ソリューションズとともにオープンデータの推進に向け、匿名化したデータを作成する実証実験を行ったことが報じられた。[3]
この実証実験では、神戸市が保有するデータの一部を匿名加工したのちに、統計情報に加工に集計し、これがオープンデータとして公開された。
まとめ
- 匿名加工情報とは、個人情報を加工して特定の個人を識別できないようにしたものである。
- 匿名加工情報は、個人情報に該当しない。
- そのため、匿名加工情報は個人情報に比べ取扱義務が緩和されている。
参考文献
[1] 個人情報保護委員会「個人情報保護に関する法律についてのガイドライン」