Cookieに代わる手法として注目を集める「コンテキスト広告」とは?ターゲティング広告との違い、事例を解説
2022.05.18
2022.10.03
はじめに
Cookie規制により、今までのようにターゲティング広告が出しにくくなっている。脱Cookieを掲げ、デジタルマーケティングでは血眼になってCookieに代わる技術を探し、実証しているところだ。 そのCookieに代わる手法として今、「コンテキスト広告」が注目されている。
コンテキスト広告は2000年代頃に既に登場している配信手法で新しい仕組みというわけではない。ただ、今まではターゲティング広告がインターネット広告の主流だったため、あまり注目されることがなかった。
しかし、3rd party Cookieの規制・非推奨化によって、ターゲティング広告を今までどおり活用するのが難しい事態となっている。
電通によれば、2021年のインターネット広告費は約2兆7,000億円で、マスコミ4媒体の広告費を初めて抜いた。今後も拡大することが予想されており、ターゲティング広告が活用できなくなれば、企業のマーケティングに大きな影響を与えてしまうだろう。
このような事態を回避するために代替方法として注目を集めているのが「コンテキスト広告」というわけだ。
今回は、コンテキスト広告の概要や仕組み、注目される背景、取り組む企業やサービスについて解説していく。
また、その他のCookie代替案は下記記事にまとめている。
そもそも「コンテキスト広告」とは?
コンテキスト広告(コンテクスチュアル広告)とは、Webページ内の文章やキーワード、画像をAIが自動解析し、該当記事の文脈(コンテキスト)に沿った広告を配信する手法だ。
コンテンツの文脈に沿ったキーワードでターゲティングを行うことから、これらをまとめて、コンテキスト(コンテクスチュアル)ターゲティングとも呼ばれている。
コンテキスト広告の仕組み
コンテキスト広告に利用されているのが、AIのテキストマイニング機能だ。 テキストマイニングとは、自然言語解析の手法を使用することで文章をキーワードに分割し、出現頻度などを分析することで有益な情報を取り出す。 対してコンテキスト広告の仕組みは、AIのテキストマイニング技術を活用し、Webページと広告に記載されている文章などを単語レベルで分解し、コンテンツの文脈を構成する単語の数値化を行う。
数値化されたデータをもとにWebページと広告をそれぞれコンテンツの文脈の特徴を識別する番地というデータへと整理され、番地が近い記事と広告同士をマッチングさせることで広告が掲載されるというわけだ。
コンテキスト広告の仕組みを用いれば、ユーザーが閲覧しているコンテンツと関連性の高い広告が掲載されるため、親和性の高い広告発信が可能となる。
ターゲティング広告と何が違うのか?
コンテキスト広告とターゲティング広告との違いとして挙げられるのが、広告配信のもととなるデータだ。
ターゲティング広告とは、Webサイトの閲覧・行動履歴や年齢・性別などのユーザー属性といった様々なデータを収集・分析したうえで適切だと思われる広告を配信する手法だ。
3rd party Cookieと呼ばれるユーザーを追跡するためのIDがユーザーの行動や閲覧履歴などを収集し、収集した情報をもとにユーザーの趣向に沿った広告を掲載する仕組みとなっている。
一方、コンテキスト広告の配信はAIによってWebページの内容を解析することによって行われることから、両者の仕組みは大きく異なるといってよいだろう。
コンテキスト広告が注目されている背景
コンテキスト広告が注目される背景にあるのが、ターゲティング広告に欠かせない技術であった3rd party Cookieの規制と非推奨化だ。
3rd party Cookieは今まで個人情報という扱いではなかったため、企業はデータを自由に収集・活用できていた。
しかし、ユーザーの行動履歴は「個人データではないのか」という見方が強まり、2020年代に入って3rd party Cookieの非推奨化が活発化。
Appleは2020年3月のアップデートで既に3rd party Cookieを全面的にブロックしており、Googleも2022年を目途に3rd party Cookieの廃止を行う予定だ。
さらにGDPR(一般データ保護規則)や改正個人情報保護法によって、Cookieが個人データと見なされたことで規制が進み、現在ではユーザーの同意がなければCookieの利活用ができない状態だ。
3rd party Cookieが廃止・規制されれば当然、今までのようにユーザーの行動履歴を収集できなくなるため、精度の高い広告配信は難しくなっている。
コンテキスト広告のGumGum(アメリカ・カリフォルニア州)の調査によれば、イギリスの消費者の66%が閲覧履歴を追跡されることに不快感を覚え、80%が個人データを使用しないネット広告であれば歓迎すると答えたそうだ。
こうした背景から、3rd party Cookieや個人データに依存しないコンテキスト広告が注目されるようになった。
コンテキスト広告のメリット
コンテキスト広告のメリットとしては次の3つが挙げられる。
- 親和性の高い広告配信ができる
- 企業のブランドイメージを守れる
- 匿名性やプライバシーを保てる
GumGumによれば、イギリスの消費者の約65%がWebページに関連するネット広告から商品を購入したいと答えているように、親和性の高い広告配信を行えば、関連しないWebページに広告表示されないため、企業のブランドイメージを保てるだろう。
また、コンテキスト広告ではユーザーの行動・閲覧履歴は使用されないことから、匿名性やプライバシーを保つことも可能だ。
コンテキスト広告のデメリット
コンテキスト広告のデメリットとしては次の3つが挙げられる。
- 潜在顧客への訴求が難しい
- AIの活用が必須
- 配信精度はAIの分析精度に左右される
コンテキスト広告はユーザーが閲覧しているWebページに関連したジャンルの広告が配信される。言い換えればすでに分野への強い興味関心を持っているユーザーにしか訴求できないため、ターゲティング広告のように潜在顧客へ訴求したり、認知度を高めたりできない。
コンテキスト広告の活用事例
少しずつではあるが、コンテキスト広告の活用事例は確実に増えている。ここでは、コンテキスト広告の活用事例についてみていく。
朝日新聞
朝日新聞は、Integral Ad Scienceと共同でコンテクスチュアルターゲティングを活用したコンテキスト広告の配信サービスを開発し、朝日新聞デジタルなど運営しているデジタル媒体で展開することを発表した。
ノンタゲーティング広告と比較すると、CTR(クリック率)は114~152%、ランディングページから広告主ページへの遷移率は231%上昇した他、ランディングページのスクロール上昇も確認されている。
大日本印刷
大日本印刷は、GumGum Japanと協業で、コンテキスト広告配信サービス「GumGumターゲティング」の提供を開始することを発表した。
このサービスでは、大日本印刷株式会社独自の広告取引経済圏「DNP Marketplace」を組み込むことで、Cookieに依存することなく高精度なターゲティングに対して、高い質で最適な広告配信が可能だ。
ネオマーケティング
ネオマーケティングが、慶應義塾大学SFC研究所の戦略的データ分析ラボ・田代教授と共同でコンテキスト広告に関する研究を開始したという。
具体的な研究内容としては、コンテキスト広告とCookieを使用したターゲティング広告配信の比較で、ユーザーセッション時間やCTRといった行動データやブランドカテゴリと直接関係しない連想キーワード配信など様々なデータを検証していくとしている。
コンテキスト広告サービスを展開している代表的な企業8社
活用事例とともにコンテキスト広告サービスを展開している企業も増えている。ここでは、コンテキスト広告を展開している代表的な企業についてみていく。
1.ログリー
ログリーは、独自コンテキスト解析技術を応用した「インテントキーワードターゲティング」と呼ばれる新型配信ロジックを開発し、ネイティブ広告プラットフォーム「LOGLY lift」に搭載した。
今回開発されたロジックでは、コンテンツ内の文脈から特徴的なキーワードを抽出、キーワード単位でコンテキストターゲティングが可能となり、ユーザーが該当キーワードに興味関心を持った段階で広告掲載を行うことができ、コンテンツから自然な流入が狙える。
2.BI.Garage
BI.Garageは、朝日新聞や講談社など28媒体社、約150メディア1億プロフィールを抱えるコンテンツが支える広告配信サービスを提供している。
国内プレミアムメディア150媒体1億プロフィールをもとに最適な掲載面を指定し、トピックス・キーワードと読者分析結果に基づいた広告配信が可能で、関連記事に接触した潜在顧客への訴求も行えるようだ。
3.Asahi Degital Solution
Asahi Degital Solutionは朝日新聞が提供しているコンテンツマーケティングのソリューションプログラムだ。
同社の発表によれば、Asahi Degital Solutionは朝日新聞が持つリソースを活用しながら最適なソリューションを提供するプログラムとなっており、各ターゲットの最適なコミュニケーションプランの提供や朝日新聞のDMP「朝日CDP」を活用し行動データ分析に基づく配信などが可能だ。
4.MicroAd
MicroAdが運営している広告配信プラットフォーム「UNIVERSE Ads」において、コンテクスチュアルターゲティングを提供している。
MicroAdでは独自AIによって配信対象のコンテンツカテゴリを広告配信前に分析し最適なカテゴリ選定が可能となっており、より親和性の高い広告配信が可能だ。
リリース前のテスト配信では、参加企業の9割がKPIを達成しており、高いターゲティング性と最適な広告配信が担保されている。
5.UNICORN
UNICORNが運営している全自動マーケティングプラットフォーム「UNICORN」において、コンテキストターゲティング機能が提供されている。
UNICORNでは、ターゲティング毎にキーワードグループを作成し、ユーザーの興味関心に基づいた広告配信やコンテキスト広告掲載が可能だ。
また、配信対象が広く設定されており、潜在顧客への訴求も可能となっている。
6.GumGum
コンテキスト広告を提供している企業として代表的なのが、GumGum(アメリカ・カリフォルニア州)だ。独自AIによってWebページの文脈を文字・画像の両方識別でき、記憶に残る広告配信が行える。
イン・イメージ広告だけでなく、ディスプレイやモバイル、ビデオなどキャンペーン目標の達成に向けた一連の広告商品を提供している。
ブランドセーフティーを重視した安全な広告配信を実現しており、大塚製薬株式会社(東京都)をはじめ、多くの企業が導入しているサービスだ。
7.ZEFR
「ZEFR」はフルスピードとLegolissが連携、取り扱っている動画広告向けのソリューションだ。
YouTube向けのコンテクスチュアルターゲティングソリューションで、特許取得技術によって動画を解析し、人のレビューによって強化されたAIによってコンテキストを抽出し広告配信を行う。
PRTIMESによれば、ZEFRはYouTube公認パートナーとして認定され、Meta(旧Facebook)からもオフィシャル認定されるなどすでに高い評価を得ている。
8.CRITEO
CRITEO(フランス・パリ)では、1st party Cookieのコマースデータを活用したコンテキスト広告だ。
CRITEOのセマンティック解析テクノロジーによって、WebページのURLやカテゴリ、文章、画像などを解析し文脈を理解、1st party Cookieデータをもとに親和性スコアを算出し、文脈と親和性スコアを結びつけて関連性の高い広告が表示される仕組みとなっている。
イスラム系アパレルサイトを運営するModanisa(イスタンブール)は、CRITEOを活用し、新規顧客への適切なリーチに成功した。
まとめ
- コンテキスト広告はAIを活用して閲覧されているWebページの文用やキーワード、画像などを分析し、文脈(コンテキスト)に沿った広告を配信する手法
- コンテキスト広告の仕組みは2000年頃には既に存在していたが、今まで主流となっていたインターネット広告の仕組みはターゲティング広告だった。
- 3rd party Cookieの廃止・規制や消費者のCookieへの嫌悪感によってターゲティング広告の活用が困難となったことでコンテキスト広告が注目を浴びている
- ターゲティング広告からコンテキスト広告への入れ替わりは進みつつあり、活用事例やサービスを展開している企業は増えている
参考文献
コンテキスト広告の特徴やメリット・デメリット、始め方や活用事例を紹介!
朝日新聞社・IAS社 日本メディアで初の共同開発 AI解析による文脈にあわせた広告配信サービス「コンテクスチュアルターゲティング」の提供を11月9日より開始
「GumGum」と連携し、クッキーに依存しないコンテクスチュアル・ターゲティングの提供を開始
【ネオマーケティング、慶應義塾大学SFC研究所とポストCookie時代に適応する為「コンテクスチュアルターゲティング広告と連想キーワード広告」の分析を開始】
ログリー、Cookieに依存しない新型配信ロジック「インテントキーワードターゲティング」を発表
150メディア1億プロフィールの読者群へ向けたビューアブルで効果の高い広告体験
コンテンツマーケティングのソリューションプログラム「Asahi Digital Solutions(ADS)」の提供を開始
全自動マーケティングプラットフォーム「UNICORN」、コンテンツの文脈に沿ったキーワードでユーザーターゲティングを行うコンテキストターゲティング機能の提供を開始
AIによる独自のコンテクスチュアル広告が、広告をより価値あるものに。
従来のコンテクスチュアルキャンペーンを、コマース シグナルでアップグレード
Criteo コンテクスチュアル広告を活用してオーディエンスベースを拡大するModanisa
GumGum Powers into Europe as New Research Shows Consumers Reject Behavioural Ads