デジタルマーケティングで影響大の「IDFA変更」とは何か?今後の影響は

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投稿者:編集部
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はじめに

AppleでIDFA利用制限により「ネット広告」ビジネスモデルが揺らいでいる。

Appleが2020年6月に発表したIDFA利用制限は、アプリ業界を震え上がらせた。Appleの決断はCPM(インプレッション単価)を低下させ、アプリ事業者の広告売上が大幅に減少するという懸念があったからだ。しかし不幸中の幸いか、現状ではそこまで混乱は起こっていないようだ。

一方、すでにビッグテックの売上には大きな影響を及ぼしている。英FTは2021年11月、IDFA利用制限により、ビッグテック4社の広告売上高が約100億ドル減少する見通しだと報じた。あまりにショッキングなニュースであったことから、世界各国のメディアでも報じられる事態となった。

しかしなぜAppleはIDFA使用制限の実施に踏み切ったのか。今回は、AppleがIDFA使用制限を実施した背景や使用制限による影響について解説していく。

Appleが2021年春よりネット広告制限を実施

「”App“が他社のAppやWebサイトを横断してあなたのアクティビティの追跡することを許可しますか?」という文章をよく見る。しかし、これが何かを分かっている人は少ないだろう。

App がアクティビティを追跡してもよいか確認してくる場合(https://support.apple.com/ja-jp/HT212025)より引用

引用:https://support.apple.com/ja-jp/HT212025

Appleはこれまでユーザーがデータ提供設定を拒否しない限りは、アプリ事業者が自由にIDFAを取得できるようにしていた。しかし、2021年春からネット広告制限により、iOS14.5より全てのApple製品上でIDFAの取得にユーザーの許可を義務付ける「IDFA取得のオプトイン化」が適用された。

これが「IDFA取得のオプトイン化」だ。オプトインとは、個人情報などのデータ提供可否をユーザー側が選択できる状態を指す。 オプトインが適用されている場合、事業者はユーザーから許可をもらわなければデータの取得が行えない。つまり、IDFA取得のオプトイン化によって、アプリ事業者は従来のようにIDFAを自由に取得できなくなる。

日本経済新聞によれば、IDFA取得のオプトイン化は「Apple Storeで新たなに入手するアプリだけでなく、ダウンロード済みのアプリにも適用される」という。

そもそもIDFAとは何か

IDFAは3rd party Cookieに似ている。 IDFA(Identifier for Advertiser)とは、AppleがユーザーのiOS端末ごとに付与しているデバイスIDのことで、端末を識別することができる。そのため、IDFAに紐づいた利用履歴などの個人データを広告仲介会社や広告配信会社が取得、自社の製品・サービスを買いそうな消費者に対象を絞った広告「ターゲティング広告」に活用することができた。この辺りは、「足あと」と言われる3rd party Cookieに似ている。

一方IDFAは、その端末の所有者データを匿名化することができる点だ。そのため、ユーザーのプライバシー保護をしながらアプリ計測ができる。

またIDFAはユーザー自身が確認をすることができる点も評価が高い。これは、モバイルアプリ計測「Adjust Insights」を用いて計測できる。気になった方は是非試して欲しい。

IDFAと似たものに、「ADID(Google Advertising ID)」というものがある。これは、AndroidOSの端末に付与されているデバイスIDのことだ。役割はIDFAと全く同じであり、両者の違いは「IDの発行企業がAppleかGoogle」のみとなっている。

AppleがIDFAの使用制限を実施した背景

しかしなぜ、AppleはIDFAの使用制限に踏み切ったのだろうか。

もともと、CookieやIDFAなどのモバイル広告IDは「個人情報ではない」とされてきた。しかし、アプリやデバイスなどを横断して様々なデータを取得・照合すれば、高い精度で個人を特定できるため、個人情報であるという見方が拡大。これにより、近年ではGDPRを筆頭に、CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)や日本でも改正個人情報保護法で、国や政府単位での規制が行われるようになった。

各々、法律とも多少の違いはあるが、共通概念は「CookieやIDFAなどのモバイル広告IDをもとにデータ計測するには目的を明確にして許諾を得る必要がある」ということだ。こうした法整備の加速を背景に、AppleはIDFA使用制限実施に踏み切った。

Cookieについては、過去の記事で解説している。

脱Cookieから注目を集める「IDソリューション」と「データクリーンルーム」とはーーKDDIと電通事例を紹介

実際、IDFA使用制限によりどのような影響が出ているのか

IDFAの使用制限により、どのような影響が具体的に出てきたのか。IDFAの使用制限による影響は以下に記した5つが考えられる。

  • IDFA取得許諾率の低下
  • 取得できるデータ量の減少
  • ネット広告の配信精度の低下
  • アトリビューション分析の低下
  • レポート管理コストの増加

それぞれ詳しく見ていく。

IDFA取得許諾率の低下

IDFA使用制限の最も大きな影響は、IDFA取得許諾率の低下だ。Metapsが独自実施したiOS14.5リリース前後の許諾率調査によれば、リリース前(2021年4月1日~26日)の平均許諾率はアプリ全体で75%程度だったのに対し、リリース後は50%を大きく下回っている。

以上の点から、取得許諾率の低下はIDFAの使用制限の影響が大きい。今後、iOS14.5以上のユーザー比率が増加すれば、IDFA取許諾率がさらに低下することも考えられる。

取得できるデータ量の減少

IDFAの取得許諾率が低下すれば、従来取得可能だったデータ量が減少し、取得できるデータ量に制約が生まれる。その結果、アプリ広告の効果計測やアプリ内での行動データを十分に分析できなくなり、アプリ事業者が満足にサービスを提供できない事態となる。

ネット広告の配信精度の低下

ターゲットを絞ってネット広告を配信するためにIDFAが欠かせないのは前述のとおりだ。IDFAが取得できなければ、ターゲットを絞った配信ができないため、ネット広告の配信精度は今後大きく低下するだろう。

IDFAの使用を制限されると、ユーザー計測できないため、運営企業であるMetaは大きなダメージを受けることになる。事実、ターゲッティングをしない広告配信の実証実験を行った結果、広告の投資収益率が50%減少することがMetaのレポートにより判明している。

また、BIGLOBEニュースによれば、IDFAの使用制限による逸失広告収入が2022年通期で100億ドル(約1兆1,500億円)と発表したことで、Metaの株価は急落。時価総額は1日で2,520億ドル(約29兆500億円)減少している。詳しくは下記記事に書いている。

https://acompany.tech/blog/meta-3rd-party-cookie-regulation/

アトリビューション分析の低下

アトリビューション分析とは、成果に至った直接の接点だけでなく、通過した広告やメディアなどの貢献度も評価するマーケティング分析手法の1つ。各メディアの貢献度が把握できるため、最適な予算配分が可能だ。

Facebook広告はアトリビーション分析が最大の魅力であったが、IDFAの使用が制限されると取得データ量が減少するため、今後分析精度は大きく低下するだろう。

レポート管理コストの増加

IDFAの使用制限にともない、SKAdNetworkへ代替する企業も増えている。しかし、SKAdNetworkではアプリ内のデータ紐づけができないなど、取得できる計測データに大きな制限があることは前述のとおりだ。

よって、移行期間はIDFAとSKAdNetwork、それぞれ別の広告計測ツールを使用しなければならず、レポート管理コストが増加する懸念もある。

Appleが用意した代替のフレームワーク

IDFAの使用制限にともないAppleは「AppTrackingTransparency framework」と「SKAdNetwork」の2つのフレームワークを用意している。

AppTrackingTransparency framew

AppTrackingTransparency framewとは、IDFAのオプトイン同意をユーザーから得るためのフレームワークで、IDFAを利用するアプリの開発者が自社アプリに組むべきものとされている。

前述の新しく入手したアプリを開いたときに「”アプリ名”が他社が所有するAppやWebサイトを横断してあなたを追跡する許可を求めています」という表示は、このフレームワークを使用して表示できる。

IDFAのオプトイン同意に対して、ユーザーが「トラッキングを許可」を選択すれば、従来どおり、IDFAのデータ取得が可能だ。

SKAdNetwork

SKAdNetworkとは、IDFAを使用せずに広告効果を測定できる仕組みだ。IDFAに変わるフレームワークとして期待されている。

しかし、現状のSKAdNetworkはIDFAと比較すると取得できる計測データが大きく制限されるため、アプリ事業者などの間で課題となっている。

今後のビッグテック動向について

今回のAppleのIDFA制限は、ビッグテックに多大なる影響を及ぼした。 ここでは、IDFA使用制限で大きな影響を受けているFacebookとGoogleの今後の動向について見ていく。

Metaの動向

IDFAの使用制限によるMetaへの影響はFTで書かれ、そして最近の決算でも大きな爪痕を残している。またIDFAの使用制限にともない、Appleに批判的な意見を述べた上でIDFAデータ収集の停止を発表している。The New York Times、The Wall Street Journal、The Washington Postなど主力紙に見開き広告を掲示して批判したから驚きだ。

では、Metaは今度どのように対応していくのだろうか。様々な施策が発表されているが、注目されている新手法は、新しいビジネスモール「Facebook Shops」とオフラインデータの活用だ。

■新しいビジネスモール「Facebook Shops」
「Facebook Shops」とは、FacebookやInstagram上でオンラインショップを開設できる機能で、2020年5月にリリースされた。カスタマイズが可能なオンラインショップをSNS上で無料開設できる。 無料であることから予算関係なく開設でき、SNSという特性上、多くのユーザーに商品を認知できることから、Facebook広告に変わる媒体として注目を浴びている。

■オフラインデータの活用
オフラインデータとは、実店舗で取得できるデータのことだ。ファッションブランドのMICHAEL KORS(アメリカ・ニューヨーク州)は購入金額や来店頻度などのオフラインデータを利用して、広告費用対効果33%、収益25%の増加に成功している。

オフラインデータの最大の魅力は、IDFA使用制限の影響を受けないことだ。そのため、オフラインデータの収集が広告配信に必要不可欠だとMetaは考えており、オフラインデータを活用した広告配信に投資していく方針だ。

Googleの動向

GoogleはIDFAの使用許可に関して、MetaのようにAppleに意見は述べていない。ただ、IDFAの取得許可を得ている場合は従来どおり、IDFAからデータを収集し、取得許可を得られていない場合はSKAdNetworkを活用していく方針を示している。 広告配信に関しては、「Google Mobile Ads SDK」で対応するとしており、広告計測はSKAdNetworkを活用するそうだ。

まとめ

  • IDFAとは広告IDや広告識別子とも呼ばれ、AppleがユーザーのiOS端末ごとに付与しているデバイスIDのことである
  • 事業者が自由に取得できていたIDFAだが個人情報であるという見方が拡大。国や政府単位で法整備が進んだことを背景にAppleはIDFA使用制限を実施。
  • IDFA使用制限は取得できるデータが減少するため、マーケティングに大きな影響を与える。Facebook広告への影響は大きく、広告投資収益率が50%減少することが示唆されている他、2022年通期の逸失広告収入は100億ドル(約1兆1,500億円)と試算している。
  • MetaはIDFAデータの収集を停止し、オフラインデータによる広告配信へ戦略転換。Googleは状況別にIDFAとSKAdNetworkを併用する方針。

参考文献

あなたのデータの一日

ユーザーのプライバシーとデータの使用

追跡型広告、プライバシー保護で転機 Appleなど対応

Apple、今春にネット広告を制限 情報取得に許可必要

【iOS14.5】IDFAオプトイン化の広告への影響と今後取るべき戦略とは?

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