はじめに
人流データとは「人がいつどこに何人いるのか」を把握できるデータのことを指します。
世の中のIoT化やスマート化で急増するビッグデータのひとつであり、マーケティング・防災・まちづくり・観光などの様々な分野における活用が期待されています。
各主要都市で外出自粛要請が連続する最近(2021年6月現在)、人流という言葉は「人流を抑制」などの使われ方で見聞きすることが急激に増え、人々の関心を集めています。
本記事では、マーケティング領域での人流データの活用例を紹介します。
人流データについての詳細はこちらの記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
人流データ×マーケティングの事例紹介
以下、人流データ×マーケティングについて実例とともに紹介します。
人流データ×車流データで、ユーザーの興味関心に合わせた店舗情報を配信
デンソーとNTTデータは2020年6月から2021年3月にかけて、車流データと人流データを活用した移動体験改革の実証実験を行いました。
この実験では、自動車の車載器から収集した運転特性や運転状況などの車載データと、スマートフォンのGPSやBeacon反応ログなどから収集した人流データをもとに、ユーザーの興味関心に応じた店舗情報を、受容性が高いと推測されるタイミングでレコメンド(推奨)しました。
実証結果として、ユーザーの嗜好パターンや行動理解に基づいたレコメンドほど、高評価を得ることが分かりました。
人流データで商圏を把握し、新規バス路線を開業
西東京バスは、クロスロケーションズが保有する位置情報ビッグデータ活用プラットフォームを活用して、2021年6月から、八王子・日野と新宿駅西口を結ぶ高速バス路線を新たに開業しました。
ユーザーの許諾を得たスマートフォンのGPSデータをもとにした位置情報ビッグデータは、商圏把握や顧客理解に活用され、従来からバスの増便や減便のための裏付けデータとして活用されてきました。
今回の事例では、西東京バスは人流データをもとに見込み客が多い住宅街に停留所を設置して、ダイレクトに新宿に向かうルートを設定しました。
それによって、八王子・日野の居住者が新宿方面に向かう際に直面する、乗り換えや混雑といった潜在的な課題に対応しました。
人流データで商圏を開発し、ポスティングを最適化
同志社大学大学院 総合政策科学研究科 柿本研究室所属 櫻井勇希氏と、クロスロケーションズは、2020年に、京都の人気飲食店「酒場トやさい イソスタンド(以下、イソスタンド)」の新商圏解析実証実験を行いました。
イソスタンドは新型コロナウイルスの影響でテイクアウトやデリバリーを開始しましたが、その利用につながる効果的なポスティング等の販促に課題を抱えていました。
そこで実証実験では、テイクアウト・デリバリー利用につながる効果的なポスティングを行うために、店舗の周辺地域に一律でポスティングするのではなく、従来店舗に訪れていた人が多いエリアにポスティングするための商圏分析を行いました。
クロスロケーションズの位置情報ビッグデータ活用プラットフォームを用いて、過去に実店舗を訪れた人々の居住エリアを推定し、ポテンシャルの高いエリアに絞ってポスティングが行われました。
結果として店舗への注文は急増して、人流データ上でもその効果は確認されました。
人流データで小売店舗販売額を可視化・予測
インテージとドコモインタイトマーケティングは、人流データを用いて小売店舗販売額についての実証実験を行いました。
全国の小売販売動向データと全国のリアルタイム人口データを掛け合わせ、コロナ禍によって店舗ごとの販売額が大きく上下した期間においても、高い精度で各店舗の販売額を推計できることを検証しました。
ここで用いられた人口データは、リアルタイムで人口の増減を把握できるため、今後消費者の移動の変化が生じても、店舗における販売額の推計値をタイムリーに算出でき、適切な施策の実行につながるとされています。
まとめ
- 人流データ×車流データで、ユーザーの興味関心に合わせた店舗情報を配信
- 人流データで商圏を把握し、新規バス路線を開業
- 人流データで商圏を開発し、ポスティングを最適化
- 人流データで小売店舗販売額を可視化・予測
位置情報に代表される人流データは、マーケティング施策において効果的な役割を果たします。
人流データは単体でも大きな価値をもたらしますが、他社が保有する人口流動データ等のデータと組み合わせることで、さらに価値をもたらす知見を得ることができます。
一方で、位置情報等は他のデータと組み合わせることで、個人を特定する情報になる可能性もあり、慎重な取り扱いが求められています。そのため、人流データを組織間で連携して活用することに関しては課題が残っています。
弊社Acompanyでは、そのようなプライバシー性の高いデータの組織間連携を安全に実現する、秘密計算技術の開発を行っています。
秘密計算を用いることで、データを暗号化したまま統合・分析できるため、安全な組織間データ連携が可能となります。
秘密計算についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
参考
https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2021/060801/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000060.000037476.html