共通IDとは?複数のサービスで個人情報を連携させるメリットとデメリットを紹介

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投稿者:編集部
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はじめに

インターネット全盛の現代社会では、様々なサービスが登場している。例えば日本人の誰もが利用するLINEには、チャット機能だけでなく、決済、漫画、金融、ゲームなどのサービスが盛り込まれている。同一企業の中で複数のサービスが展開されていることもザラだ。

その中で、利便性を高めるために共通IDを活用する企業が増えてきた。では、その共通IDとは一体どのようなもので、どのように活用されているのだろうか。この記事ではこの共通IDについて深掘りしていこうと思う。

共通IDとは?

まず、共通IDとは一体何なのか、解説していく。

共通IDは、基本的には個人を特定するためのコードのことを指す。その用途は企業やサービスによって異なる。例えば、認証サービスのために利用される場合もあるし、企業が個人データを管理しやすくするために発行される場合もある。

共通IDのメリット

まず、利用者目線の共通IDのメリットとしては、複数サービスにおいてログインしやすくなる点が挙げられる。単純に、一つのサービスにログインするだけであれば共通IDは必要ないだろう。だが、複数のサービスを同時に利用する必要がある場合に、共通IDは効果を発揮する。一つの共通IDだけで複数のサービスにログイン可能なので、ユーザーの利便性向上に繋がるのだ。

事業者目線としては、個人データを管理しやすくなるメリットがあるといえる。氏名・住所・生年月日・健康情報などを共通IDと紐づけることで、情報管理が大幅に効率化される。さらに、データ利活用を進めやすくなるのもメリットだ。

また、ユーザーの囲い込みに繋げられる可能性がある。同一企業が複数のサービスを展開している場合に、共通IDは効果を発揮するだろう。例えば、GoogleアカウントがあればGmailもGoogleカレンダーもYouTubeも使える……という具合にだ。実際、GmailとGoogleカレンダーの組み合わせは非常に便利で、それを理由にGoogle系サービスを利用しているユーザーもいるはずだ。

共通IDのデメリット

利用者目線のデメリットとしては、個人情報漏えいリスクが一本化されることが挙げられる。一般的に、情報を一元管理した方が業務効率が向上すると言われている。だが、そこから個人情報が漏えいしてしまった場合、利用者は複数のサービスでのログインを許してしまうことになる。もちろん、個人情報も抜かれる。 ここでもGoogleアカウントを例に出すが、もしGoogleアカウントのパスワードが漏えいしてしまった場合、スケジュール、メーリングリスト、動画閲覧履歴などが全て漏えいされることになる(それを防ぐためにGoogleは2段階認証を推奨している)。

一方、事業者目線のデメリットとして挙げられるのは、入念な準備や人材配置の変更などだろう。例えば複数サービスを共通IDでログインできるようにする場合、部署を横断的にコントロールする必要が出てくる。個人情報の取り扱いマニュアルの変更も想定される。だが、そういった手間はかかるが、それに対するメリットの方が大きいと考えられる。

共通IDの活用事例

ここでは以下の企業・サービスの共通ID活用事例を紹介していく。

  • トヨタ
  • ジョブカン
  • 東京大学保健センター
  • 宝塚舞台

トヨタの活用事例

トヨタは現在、以下のサービスを展開している。

そしてトヨタが発行した共通IDを利用することで、これらのサービスにスムーズにログインできる。他にも、会員登録することにより、コミュニティサービスを利用できたり、「T-Connect ID/レクサスオーナーズカードID/レクサスサービスカードID/G-Link Lite ID」のログインが可能になったり、キャンペーンの申し込みがスムーズに利用できたりする。

これはユーザーとしては便利な仕組みだといえる。トヨタ車を利用している人からすれば、それぞれのサービスは必要不可欠なので、スムーズにログインしたいところだろう。

また、トヨタとしてもメリットがあると考えられる。トヨタ車ユーザーの囲い込みだ。 現在、自動車業界は、自動車そのものの乗り心地や機能性だけでなく、周辺サービスの使いやすさなど、ソフトウェアも重要な要素となっている。ソフトウェアの使いやすさを重視する人も一定数いることだろう。ここで、共通IDによって使いやすさが向上するのであれば、それがユーザーの囲い込みに繋がる可能性が出てくる

ジョブカンの活用事例

株式会社DONUTSは、クラウドサービス事業であるジョブカンを運営中だ。ジョブカンはバックオフィス作業を効率化するITツールで、累計導入実績は15万社を突破している。ジョブカンが提供するツールは以下の通りだ。

ジョブカンは共通IDを発行しており、共通IDは、各ジョブカンサービスの会社アカウントと紐づいている。そのため、ジョブカンサービスを一つしか利用していない人でも、共通IDは存在している。

また、同じ共通IDに紐づける形で、各サービスのアカウントを作成することも可能だ。例えば、ジョブカン勤怠管理しか利用していない企業Aがあるとしよう。その場合企業Aは、同じ共通IDに紐ついたジョブカン経費計算の会社アカウントを作成することができる。

さらに、別々の共通IDでそれぞれのジョブカンサービスのアカウントを作成した場合では、共通IDの統合を行うことができる。

また、利用するユーザーごとに権限を付与することが可能だ。例えば「管理者は全ジョブカンサービスを利用できるが、社員Aはジョブカン給与計算のみの利用できる」ということもできる。

このように共通IDを活用することで、ジョブカンはバックオフィス業務効率化のプラットフォームサービスを提供している。横断的に利用できるので、小規模・大規模関係なく、様々なスケールの企業に対応した設計となっている。

東京大学保健センターの活用事例

東京大学では、東京大学保健センターが学生・教職員の健康管理をサポートしている。保健センターは健康管理部門と診療部門に分かれており、健康管理部門では一年に一度の定期健康診断や、栄養指導が実施されている。一方、診療部門では、内科・精神科・耳鼻咽喉科・歯科・皮膚科などを受診できる。これらで収集されたデータは、臨床研究などに活用されることもあるようだ。

そして東京大学保健センターは、各身分証(東京大学の職員証・学生証)の右下に記載されている18桁の数字の下10桁を共通IDとしている。健康診断やインフルエンザの予約をする際は、共通IDを入力する必要があるのだ。

ではなぜ共通IDを入力する必要があるのか。それは東京大学が学生・教職員の健康情報をスムーズ管理できるようにするためだと考えられる。

一般の大学でも学籍番号は存在しており、それに紐づける形で履修登録が行われたり健康診断を申し込んだりするだろう。だが東京大学保健センターの場合、先ほども述べたが、学生・教職員の健康情報が臨床研究に活用される。それはつまり、東京大学保健センターが個人データを握り、活用することになるため、厳格な管理が必要になるということでもある。

実際、東京大学保健センターは「個人情報の取り扱い」というページを立ち上げており、そこで個人情報取り扱いの文書を閲覧できる。それによれば、いくつかの条件はあるが、利用者は個人情報の利用の停止・消去を求めることができる。その場合東京大学保健センターは、共通IDを導入しているので迅速な対応を実施することができるだろう。

以上の通り、東京大学保健センターは、プライバシー保護の目的で共通IDを導入していると考えられる。

宝塚歌劇共通IDの活用事例

株式会社宝塚舞台は、宝塚歌劇共通IDを発行している。宝塚歌劇共通IDを発行することで、利用者は以下のWebサービスを利用できる。

Quatre Reves ONLINEは宝塚歌劇オフィシャルショップである「キャトルレーヴ」のオンラインショップのことで、HH Crossは阪急阪神ホールディングスグループが提供する会員サービスのことだ。ちなみにHH Crossでは既にHH cross IDが発行されているのだが、HH cross IDも宝塚歌劇IDとして利用することができる。

また、宝塚舞台は現在、スマートフォン向け新サービスを発表する予定で、その際にも宝塚歌劇共通IDを利用可能だという。ちなみに宝塚舞台は「宝塚歌劇スケジューラ」と呼ばれるアプリを展開しているが、お世辞にも評価が高いとはいえない。これを刷新する形でアプリを開発しているのだと思われる。

そして宝塚歌劇共通IDも、ファンの囲い込みが狙いだと考えられる。元々、宝塚歌劇団は熱狂的なファンが多いコンテンツだ。コロナ禍の影響で一時的に入場者数が激減したが、ここ最近はしっかり復調している。株式会社宝塚舞台の第24期決算公告(2022年3月31日)では、黒字に戻せていた。

また、宝塚舞台は阪急阪神が株主となっている。そのため両社としては、宝塚歌劇団の本場である兵庫県までの観光客増加を狙っているのだと考えられる。

Googleアカウントも広義の意味では共通ID

私たちの多くが利用しているGoogleアカウントやAppleIDも、共通IDだといえるだろう。そもそも、共通IDと名乗っていないだけで、同じような役割を担うIDはまだまだたくさんあると考えられる。少なくともビッグテックの大半は、共通IDに近いものを発行している。

先ほどは国内4社の共通IDの活用事例を紹介したが、どれも複数サービスを紐づけるために活用されていることが分かる。東京大学保健センターでは健康情報の取り扱いに焦点を当てて解説したが、おそらくは学籍番号で履修登録や出席管理ができる仕組みになっているはずである。

また、共通IDを発行することで、新規サービスを開発した際にスムーズに登録させる狙いがあると考えられる。例えば、ジョブカンで新しいサービスができても利用者はすぐに登録できる。また、宝塚歌劇の新作アプリを登場させる際には、宝塚歌劇共通ID保有者にプッシュ通知を送信できる。

ここ最近はSaaSのM&Aが活発になってきているので、その際にも共通IDは大いに役立つだろう。そう考えると、現代のテック業界において共通IDは必要不可欠な要素となっていると考えられる。

まとめ

  • 共通IDは複数サービス内で個人を特定するためのコードのことを指す
  • 共通IDが導入されると、利用者は複数サービスを容易にログインできる
  • 事業者目線では、共通IDを導入することで利用者の囲い込みや個人データの一元化が見込める

参考文献

TOYOTA/LEXUSの共通IDとは?

ジョブカン共通IDとは何ですか

共通IDとは(What is the Common ID?)

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