ネット広告規制はGAFAMに大打撃か?2022年4-6月期の決算を解説

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投稿者:編集部
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はじめに

2022年7月末、米国のビッグテック・GAFAMの四半期決算が発表された。Google、Amazon、Facebook(現:Meta)、Apple、Microsoftの5社だ。だが、ここ最近のビッグテックの決算は、世界各国のビッグテック規制により、かなり落ち込んでいる。

そこで本記事では、GAFAMの決算を通して、デジタルマーケティングが今後どうなっていくのかを考察してみようと思う。

Metaの4-6月期の決算

世界最大規模のSNS・Facebookを運営しているMetaは、米国時間7月27日に第2四半期決算(4-6月期)を発表した。第2四半期の売上高は前年同期比0.9%減の288億2,200万ドルで、上場以来初めての売上高減少となった。純利益は前年同期比35.7%減の66億8,700万ドルに落ち込んでいる。

一方で、InstagramやWhatAppなど、Metaのいずれかのアプリを使用したデイリーアクティブユーザー数(DAU)は28億8,000万人となり、前年同期比4%増だった。このうち、FacebookのDAUは19億7,000万人で、前年同期比3%増だった。

これらの売上高減少とコスト増加を受け、第2四半期の営業利益率は、前年同期の43%から29%に低下した。

また、VR機器の販売を含むReality Labs(RL)の売上は、前年同期比48.2%増の4億5,200万ドルとなっている。そして同社は、ハイエンドVRヘッドセットでありMR(複合現実)を実現する「Project Cambria」を、年内までに発売する予定だ。

さらに、MetaのCEO(最高経営責任者)であるマーク・ザッカーバーグ氏が、FacebookとInstagramのコンテンツの約15%はAIが提案しており、それが来年までにこの割合が2倍になる見通しを示したのも興味深い。

Metaの決算で注目すべきなのは、地域別の広告売上高だろう。米・欧州地域の広告収入は前年同期比6.9%減の191億4,800万ドル。その一方で、アジア太平洋地域では前年同期比13.3%増の58億3,500万ドルとなっている。

これは、GDPRなどの欧米のプライバシー法の影響を強く受けている一方で、アジアでは比較的自由にネット広告ビジネスが展開できていることを示している。

現在、MetaはVRのハードウェア開発などのメタバース事業に大きく投資している。その中で、ネット広告規制やTiktokとの競争に直面しているのは非常に苦しい状況だと思われる。

Googleの4-6月期の決算

Googleの持株会社であるAlphabetは、米国時間7月26日に第2四半期決算(4-6月期)を発表した。第2四半期の売上高は前年同期比12.6%増の696億8,500万ドル、純利益は13.6%減の160億200万ドルとなった。Metaとは異なり売上高は増加傾向にあるものの、成長率は鈍化している。

売上高を詳しくみていくと、Google検索と他の関連事業の広告は前年同期比13.5%増の406億8,900万ドル、YouTube広告が4.8%増の73億4,000万ドルとなっており、特にYouTube広告の成長率鈍化が示されている。AlphabetのCFO(最高財務責任者)のルース・ポラット氏は「サプライチェーンや在庫の問題で、一部企業が広告出稿を控えている」と述べた。

一方、クラウド事業は純損益8億5,800万ドルの赤字ではあるものの、売上高は前年同期比35.6%増の62億7,600万ドルとなっており、着々と成長している。

現在、プライバシー規制やコスト増加に伴い、広告費、特にネット広告の出稿を抑える企業が増えている。しかしGoogleの検索広告は、Metaのパーソナライズ広告よりも安定感がある。その結果が今回の決算で示されたように思える。ネット広告規制の状況下においてまずまずの結果なのではないか、という声が強い。

とはいえ、長期的な目線では一切油断ができないのも事実だ。Googleは現在、コスト削減のために一時的に採用を停止しているという。

Appleの4-6月期の決算

Appleは、米国時間7月28日に第3四半期決算(4-6月期)を発表した。第3四半期の売上高は前年同期比1.9%増の829億5,900万ドル、純利益は前年同期比10.6%減の194億4,200万ドルとなった。売上高に関しては過去最高の売り上げを記録している。

製品カテゴリー別の売上高を見ると、iPhoneが前年同期比2.8%増の406億6,500万ドル、Macが10.4%減の73億8,200万ドル、iPadが2.0%減の72億2,400万ドルとなっている。また、ウェアラブル、ホームデバイス、アクセサリーは7.9%減の80億8,400万ドル、サービスが約12.1%増の196億400万ドルとなった。

また、地域別の売上高を見ると、米国は前年同期比4.5%増の374億7,200万ドル、欧州は1.8%増の192億8,700万ドル、中国は1.1%減の146億400万ドル、日本は15.7 %減の54億4,600万ドル、その他アジア太平洋地域が14%増の61億5,000万ドルとなっている。

今回の発表で、AppleのCEOのティム・クック氏は「ユーザーのプライバシーとセキュリティを保護する新機能や、全ての人のための製品を作るという長期的な取り組みの一環であるアクセシビリティを高めるツールなど、私たちはこれまで通り、私たちの価値観を持って、作るもの全てにそれを実現させる」とコメントしている。

このコメント通り、米国のビッグテックの中でも、Appleはプライバシー保護に非常に力を入れている企業だ。その影響がMetaとGoogleの決算の低迷に繋がっている。

決算で気になる点を挙げるとするなら、やはり日本における売上高の減少だろう。円安や実質賃金の相対的な低下が影響していると考えられる。Apple製品を購入できないぐらいに、日本人が少しずつ貧乏になっているのかもしれない。

Amazonの4-6月期の決算

Amazonは、米国時間7月30日に第2四半期決算(4-6月期)を発表した。第2四半期の売上高は前年同期比7.2%増の1,212億3,400万ドルとなった。その一方で20億2,800万ドルの赤字となった。

売上高を見ていくと、サービス売上高(AWSなど)が前年同期比17.4%増の646億5,900万ドルなのに比べ、製品売上高(Amazonストアなど)が2.5%減の565億7,500万ドルとなっている。

また、赤字になった要因としては、EVメーカーのRivian(アメリカ・カリフォルニア州)への出資の株式評価損が計上されたのが、背景にあると考えられている。

Microsoftの4-6月期の決算

Microsoftは米国時間7月26日に第4四半期決算(4-6月期)を発表した。第4四半期の売上高は前年同期比12.4%増の518億6,500ドル、純利益は1.7%増の167億4,000ドルとなった。

今回の決算発表では、Teamsの成長が強調された。この1年間で450種類以上の新機能が搭載され、チャット・会議・電話の全てのカテゴリーでシェアを獲得しているという。ただし、月間アクティブユーザー数は公表されず、ユーザー数を獲得できているかどうかは不透明だ。

ネット広告は、やはり厳しそうだ

ここまで、GAFAMの決算を一通りまとめてみた。やはり、全体的に決算が落ち込んでいるようだ。これは世界全体で見られているコスト高や、GDPRなどのビッグテック規制が背景にあるだろう。また今後は、欧州でDMA(デジタル市場法)とDSA(デジタルサービス法)が施行される予定なので、ビッグテック規制がより強まっていく見通しだ。

特にネット広告は厳しくなっている。なぜなら、欧米においてプライバシーリテラシーが年々高まっているからだ。これは、トランプ大統領当選やブレグジットを招いたケンブリッジ・アナリティカ事件の影響が大きいと考えられる。

プライバシーリテラシーが高まると、個人データを活用したパーソナライズド広告を展開するのが厳しくなる。そして結果的に広告パフォーマンスが落ち、ネット広告を中心としたビジネスが難しくなるのだ。現在、GoogleとMetaはその影響をもろに受けている。

そして追い討ちをかけるように、Appleがそのメインストリームに乗っかってきている。Appleは、自社製品のプライバシー保護を強めるようになっており、それがGoogleとMetaに大きな影響を及ぼしている。特にMetaに関しては、基盤の大きなプラットフォームを所有していないため、AppleとGoogleに翻弄され続けている。それを抜け出すために、Metaは、メタバース事業のプラットフォーマーになろうとしているが、それは厳しいとする見方が強い。

また、日本人の視点で見ると、GAFAM各社がアジア太平洋地域でしっかり成長しているのが興味深い点だった。欧米でビッグテック規制が強まっていく以上、アジア太平洋地域を狙いに定めるようになっているのかもしれない。または結果的に、アジア太平洋地域を狙うしかなくなっているのかもしれない。アジア太平洋地域には、中国ビッグテックも進出している。

とはいえアジア太平洋地域も、GDPRに相当するプライバシー法を施行する国が増えてきている。アジア太平洋地域でのプライバシー事情からは目が離せない。

まとめ

  • 全体的に決算が落ち込んでいる
  • 特にMetaの決算がかなり落ち込んでいる
  • Appleのプライバシー保護強化により、ネット広告はより厳しくなる

参考文献

米メタ、第2四半期は初の減収 景気減速で広告に逆風 株価3%超安

マイクロソフト、決算発表で「Teams」の成長を強調–ユーザー数は明かさず