プライバシーを保護しデータ連携できる「データクリーンルーム(DCR)」とは?

  • calendar2023.08.29
  • reload2023.09.01
投稿者:acompany_blog
ホーム » プライバシーテック » プライバシーを保護しデータ連携できる「データクリーンルーム(DCR)」とは?

はじめに

「データクリーンルーム(DCR)」という単語を聞いたことがあるだろうか。

データクリーンルームとは「プライバシーを保護しつつ、複数事業者のデータを掛け合わせて活用する環境」を指す。

複数の提供元から集約したデータを、個人を特定することなく分析・活用できる環境として、webマーケティング領域を中心として注目を集める仕組みだ。このデータクリーンルームが広まった背景として、GDPRなどの法規制とベンダーによるCookie規制がある。

この記事では、データクリーンルームとは何か、なぜデータクリーンルームに注目が集まっているのかその背景、そして実際の活用事例について解説していく。

データクリーンルームとは何か

データクリーンルームとは「プライバシーを保護しつつ、複数事業者のデータを掛け合わせて活用する環境」を指す。いわゆる安全な環境下で、個人情報を含めたさまざまなデータを安全に連携させたり分析したりできるようにする環境だ。

データクリーンルームの一般的な仕組みは、自社保有データや他社保有データなどをプライバシーテックなどの技術を活用し、個人を特定できない情報に加工して、データクリーンルーム内で統合・分析できるよう設計されている。

データクリーンルームが求められる背景

データクリーンルームを利用するにあたって、データクリーンルームが求められる背景を理解しておいた方がいいだろう。ここではデータクリーンルームが求められる背景を解説していく。

プライバシー法の強化

データクリーンルームが求められる背景として、まず挙げられるのがプライバシー法の強化だ。2023年4月に改正個人情報保護法が施行されたが、EUのGDPRを皮切りに、世界中の国々がプライバシー法を強化している。

特に「個人情報の第三者提供」が厳しくなったのが、ネット広告関連企業に大きな影響を与えた。

インターネットが登場した2000年代からオンラインプライバシーの問題は存在していたが、SNS広告で選挙結果に大きな影響を与えたケンブリッジ・アナリティカ事件が、プライバシー法強化に拍車をかけたと考えられる。

ベンダーによる3rd Party Cookieの規制

プライバシー法の強化により、各プラットフォーマーが3rd Party Cookieの規制を強化したのも、データクリーンルームが求められる背景として挙げられる。実際、データクリーンルームの多くは「脱・Cookie」をテーマにしている。

特に、GoogleがChromeの3rd Party Cookieの廃止を決定したのが非常に大きかったと言えるだろう。

これに伴い、多くの企業は「3rd Party Cookieを使わずに広告パフォーマンスを向上させる必要」に迫られた。その打開策の1つとして、データクリーンルームが注目されているのである。

データクリーンルームは3rd Party Dataを活用できる数少ない手段

3rd Party Dataを活用するアプローチは、大きく分けて2つ挙げられる。1つめは第三者提供の同意を取得すること。もう1つは、3rd Party Dataに匿名加工を施す方法だ。

ただし、プライバシー法の強化に伴い、第三者提供の同意を取得するのが困難になりつつある。

そこで、3rd Party Dataに匿名加工を施せるデータクリーンルームが注目されている。現時点で、匿名化技術はまだまだ発展段階で、提供しているサービスも多くない。

現状としてデータクリーンルームは、3rd Party Dataを活用できる数少ない手段の1つだと考えられる。

データクリーンルームの活用事例

データクリーンルームはマーケティングを中心として活用が加速している。一方で、ヘルスケアや子どものデータなどの活用も見られつつある。ここでは、データクリーンルームの活用事例がよくみられるデジタルマーケティングとヘルスケアの事例を見ていく。

活用例:デジタルマーケティング

顧客プロファイリングやキャンペーン効果測定など、デジタルマーケティング領域において、データクリーンルームのユースケースは増大している。

データクリーンルームは広告関連情報でも活用できるので、広告パフォーマンスをより詳細に分析できるようになる。

具体的には、広告主が保有するデータと、広告代理店が保有するデータをデータクリーンルームで掛け合わせる。広告主はキャンペーンサイトに訪問した顧客リストを、広告代理店は広告を表示した顧客リストをデータクリーンルームにアップロードすることで、信憑性の高いデータから広告効果を分析できる。

活用例:ヘルスケア

意外に思うかもしれないが、ヘルスケア領域でもデータクリーンルームの活用事例が出てきている。データクリーンルームは、複数の医療関連データを統合し、医療サービスを充実することに貢献するかもしれない。

現在、医療業界は横断的なデジタル化が進んでいない領域だとされている。例えば、かかりつけの病院を変更しようとしても、医療データが引き継がれることはほとんどない。その病院でゼロから診察をやり直す必要がある。

また、個人データの中でも、医療関連データはセンシティブなので、横断的に扱いにくい現状がある。

そこでデータクリーンルームだ。データクリーンルームであれば、個人が特定されないデータ環境の中で、複数の医療関連データを統合できる。これにより新たな治療法の発見、副作用調査、統計分析、医療・介護サービスの質向上、医療現場の業務効率化が見込まれる。

詳細は後日公開予定の事例記事に記載予定だ。

データクリーンルームに取り組むサービス

データクリーンルームへの取り組みを表明している企業は案外多い。ここでは、データクリーンルームに取り組む企業のサービスを簡単に紹介していく。

AWS Clean Room

2022年よりAWSにてサービスが開始した『AWS Clean Room』。 AWS Clean Roomsは、お客様とパートナー企業が、基礎となるデータを互いに公開することなく、集合的なデータセットの分析とコラボレーションを行い、新たな洞察を得ることを支援するサービスとなっている。 AWS Clean Roomsでは、すでにAWSを利用している何千もの企業とコラボレーションすることが可能。コラボレーションでは、データをAWSから移動したり、別のプラットフォームにロードしたりする必要はない。クエリを実行する際、AWS Clean Roomsは元の場所からデータを読み込み、組み込みの分析ルールを適用することで、データのコントロールを維持することができる。

Habu

『Habu』は、Salesforceのデータ管理プラットフォームであるKruxを開発したチームによって創業された企業だ。それから急激に成長し、現在はAWS、Snowflake、GCPなど、様々なDCPにアクセスできるサービスとなった。 これは、Habuの最大の特徴でもある。データクリーンルームはその性質上、規模が大きければ大きいほどデータの精度が高まる。そしてHabuであれば、複数の企業が提供するデータクリーンルームを単一のインターフェースで表示できる。そのうえ、コーディングなしで自動化を構築することも可能だ。 データ活用は非常に重要な業務だが、多くの企業にとって、最も重要な業務ではないはずである。だから可能な限り、データ活用に投下する時間は少なくすべきだ。そのなかで、業務効率化に力を入れるHabuは、最有力な選択肢になるだろう。

AutoPrivacy

2022年よりサービスを開始した、秘密計算や連合学習などプライバシーテックを強みとするデータクリーンルーム。名古屋大学発スタートアップAcompanyが展開するサービスだ。 技術だけではなく、データクリーンルーム構築においてネックとなる法律の論点整理を得意としており、法律と技術双方を強みとしている。

詳しくは後日公開予定のデータクリーンルームサービス比較記事を確認してほしい。

まとめ

  • データクリーンルームとは「プライバシーを保護しつつ、複数事業者のデータを掛け合わせて活用する環境」のこと
  • データクリーンルームは、個人情報保護法やGDPRなどプライバシー法の強化と、ベンダーの規制により、Cookieに代わる手段として注目が集まっている
  • データクリーンルームに取り組むサービスは、AWS Clean Room、Habu、AutoPrivacyなどがある