はじめに
プライバシーに関して学ぼうと思ったときにどのような本がおすすめなのだろうか。そこで今回は連休中に「プライバシー」について知識を蓄えたい、極めたい人向けにおすすめの本を5冊紹介していく。テーマごとに紹介していくので、気になったところから読んでいってほしい。
- 改正個人情報保護法についてざっくり学びたい
- データ活用とプライバシーについて専門書からガッツリ学びたい
- データ活用がマスメディアによってどう報じられてきたのか知りたい
- 専門家から見て、データ活用の危うさはどう映るのか知りたい
- プライバシーとは何か、一度立ち止まって自問自答したい
改正個人情報保護法についてざっくり学びたい
なんと言ってもプライバシーを考えるうえで切っても切り離せないのが、2022年4月に施行した改正個人情報保護法だろう。しかし、「改正個人情報保護法がよく分からない」「一体改正前と何が変わったんだ」と思う人も多いはずだ。
そこでご紹介したいのが、田中浩之弁護士や蔦大輔弁護士などが執筆した『改正個人情報保護法超入門』だ。

この本は、2022年4月改正により追加された「個人データ漏洩の際の対応方法」や「個人データの第三者提供」などについてイラストを交えながらわかりやすく書かれている。ぜひ、改正個人情報保護法について知りたい、学びたいと思った方にはじめに手にとってほしい1冊だ。
データ活用とプライバシーについて専門書からガッツリ学びたい
より個人情報保護法について学びたいという方におすすめなのは、個人情報保護法や電気通信事業法などの専門家である渡邊涼介弁護士の『データ利活用とプライバシー・個人情報保護』だ。

個人情報の基本的な扱いやプライバシー情報の扱いから始まり、カメラ画像情報や位置情報、IoTといった事例ごとのデータ活用と法律について詳細に解説されている本だ。通読よりも事例が出てくるたびに「調べる」ために一家に一冊置いておきたい良著だ。
データ活用がマスメディアによってどう報じられてきたのか知りたい
日本経済新聞が、学生の内定辞退率予測データを企業に販売したリクナビ事件を報じたのは記憶に新しい。その前後に同社が「データの世紀」という連載をしていたことはご存じだろうか。このデータの世紀の連載は2019年に新聞協会賞を受賞した、傑作とも言える連載だ。
そのデータの世紀の連載をまとめた本が、『データの世紀』だ。

リクナビ事件を軸に、過去に発生したデータの外部販売の事例として有名なJR東日本のSuicaデータの販売についてや、スコアリングについてなどの記事を通して知ることができる。「データ活用が怖いのでやめましょうという話」ではなく、「当時何が起こったのか」という事実を俯瞰して知ることができるという意味で、一読しておきたい。
専門家から見て、データ活用の危うさはどう映るのか知りたい
この本は主に、2013年に発生したJR東日本のSuicaデータ販売に関するお話だ。専門家から見て、JR東日本の行動は何がいけなかったのか、講演のレポになっている。『ニッポンの個人情報 「個人を特定する情報が個人情報である」と信じているすべての方へ』は、山本一郎氏、高木浩光氏、鈴木正朝氏からなる「プライバシーフリークの会」によって行われた座談会である「プライバシーフリークカフェ」を元に構成した本だ。

2015年に出版された本著だが、今の個人情報や個人データについて一考する上で十分すぎる情報が詰まっているといっても過言ではない。個人情報とは何か、個人データとは何か一度専門家からの考えを知りたいときに一読することをお勧めしたい。
プライバシーとは何か、一度立ち止まって自問自答したい
そもそも「プライバシー」とはなんなのだろうか。プライバシーや個人情報保護について考えていく上で、このような疑問にたどり着く人は少なくない。そんなときに一読をお勧めしたいのが法学者でもある中央大学総合政策学部の宮下綋教授の『プライバシーという権利』だ。

データ利活用ビジネスが当たり前な世の中となる中、どう人権の一つである「プライバシー権」と向き合っていくべきかを淡々と述べた著作となっている。なかなかプライバシーとは何かについて語った日本語の著作は少ないため紹介したい。
今回は5冊のプライバシーテックや個人情報保護法に関する本を紹介した。もし希望があれば、技術軸の本も紹介できればと思う。