はじめに
マルチパーティ計算(MPC)を用いた事業に取り組む企業の中で、MPCアライアンスに参加する企業が増えています。
本記事では、MPCアライアンスが注目されるようになった背景を2つのセクションに分けて説明ししています。前半では、MPCアライアンスに参加するメリットを、後半ではMPCアライアンスが取り組む活動について説明しています。
MPCアライアンスに関しては以下の記事で詳しく解説しています。
なぜMPCアライアンスが注目されているのか?
MPCアライアンスは、2019年11月にSepior・Unbound Tech・ZenGoによって共同設立された企業団体です。設立の目的はMPCの研究と普及であり、数多くの企業が参加しています。
また、MPCアライアンスの参加企業は2020年の1年間で3倍に到達しました。なぜMPCアライアンスは注目されているのでしょうか?
MPCアライアンスに参加するメリットを2つの側面から解説しました。
データ活用とプライバシー保護
今日では、様々な業界でデータ活用が盛んに行われています。しかし、データを活用する際にはプライバシーの保護を考えなければなりません。
実際に、EUでは2018年からGDPR(一般データ保護規則)が施行されており、個人情報・プライバシーの保護に関する厳しい取り決めが設けられています。また、アメリカのカリフォルニア州でもプライバシー保護を目的とした、CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)が2019年から施行されています。
加えて従来の暗号化技術では、データ活用とプライバシー保護の両立を実現することは難しいとされているのです。
そこで、従来の暗号化技術では実現できない付加機能を持つ、高機能暗号の開発が行われるようになりました。
高機能暗号については以下の記事で詳しく解説しています。
MPCも高機能暗号の一つであり、プライバシーを保護しながらデータの活用を可能にする技術です。そのため、MPCの普及を目的としているMPCアライアンスが注目されるようになりました。
MPCアライアンス活動によって得られる知見
公式サイトによるとMPCアライアンスの参加条件は、
現在、MPCを製品に使っているかは関係なく、業務における重要な技術ツールと見なしている企業は参加できる
とされており、MPCアライアンスの活動で得た知見を製品や研究開発に生かしたい、と考える企業にとってはとても魅力的だと考えられます。
実際に参加している企業としては、日本のNTT・中国のアリババグループ・アメリカのinpherなど、MPCの研究開発をしている企業が多数参加しています。
MPCアライアンスに参加するメリット
以上から、MPCアライアンスに参加する企業には以下のメリットがあると言えます。
- MPCによってデータ活用とプライバシー保護が両立できる
- MPCアライアンスの活動で得た知識を活用することができる
MPCアライアンスが目指すもの
MPCアライアンスに参加している企業は、次のような信念を共有しています。
- MPC技術の認識を広める
- MPCを製品に採用する際の障壁を取り除く
- オンラインサービスのプライバシーやセキュリティを強化するために、MPCを製品に採用することを促進する
つまり、製品にMPCを取り入れて活用することで、より多くの企業がプライバシー保護・セキュリティ強化をできるようにすることが、MPCアライアンスが目的のために取り組む活動です。
また、この活動によってMPCを導入する際のハードルが下がるため、躊躇せずにデータを活用できるようになると考えられます。
そのため、MPCアライアンスはデータの活用と保護を両立する社会づくりに貢献してると言えます。
まとめ
MPCアライアンスが注目されている背景を簡潔にまとめると、次のようになります。
- 高機能暗号であるMPCを用いることで、安全にデータ活用ができる
- MPCアライアンスの活動で得た知見を活かすことができる
- MPCアライアンスの活動によって、MPCを導入する際のハードルが下がるため、たくさんの企業がプライバシー保護に取り組むことができる